近頃NovelAIという文章を書くことでイラストを生成してくれるAIが物議を醸しています。
目次
NovelAI Diffusionとは?
NovelAIは2021年に小説の文章を生成するAIとしてサービスがリリースされ、
そのサービスの新機能として2022年10月からNovelAI Diffusionが公開されました。
そしてそのAIがプロのイラストレーター顔負けのイラストを生成するということで
SNS上で大きな話題となったようです。
論より証拠ということで、軽く一枚生成してみます。
さて「1girl, long dress」っと…

!?
こんな精密に描かれたイラストが数秒待っただけで生成されるとは…
しかも日本人が描いたような今どきの画風で…
「これもネットのどこかから拾ってきたんでしょ~」
って思われるクオリティですが、なんとこれは新たに作られたオリジナルのイラストです。

ぼーる丸
普通にぼーる丸より上手いやんけ!
※ちなみにぼーる丸はこの程度の画力です。
ぼーる丸はイラスト歴十年以上ですが、
こんなに描き込んだイラストは少なくとも数時間以上かけないと難しいと思います。
何故こんなことが可能なのかというと、
高品質なイラストを中心に学習させ、それを更にフィルターにかけているからです。
NovelAIは2022年8月に公開されたStableDiffusionという画像生成AIが元となっており、
その時点ではまだ脅威と言えるほどの品質のイラストは生成できませんでした。
というのも初出の時点ではまだ画像生成AIのノウハウがそんなに蓄積されておらず、
詳細にキーワードを入力しても狙った画像を生成するのもなかなか難しいくらいの精度でした。
その点NovelAIは画像の学習方法やフィルターのかけ方をそこからかなり改善しており、
飛躍的に画像生成の精度と品質を向上させることに成功したようです。
詳しくはNovelAI公式の解説記事をご覧ください。
NovelAIの使い方
NovelAIの導入は既に詳しく解説されているnoteがありますので、そちらをご紹介します。
ちなみに私もこちらのnoteを参考に導入させていただきました。
ただこのnoteに一つ補足させていただくと、
NovelAIの画像生成AI機能を使うには有料会員になる必要があります。
毎月に$10、$15、$25のサブスクリプションプランが用意されていますが、
まずは画像生成をするポイントが1000Anlas貰える$10プランに入ってから、
Anlasを使い切るほどハマってまだ作りたいと思ったら$25プランに入るのがおすすめです。
$10と$15のプランでは画像を1枚生成するのに5Anlasを消費するのですが、
$25のプランでは標準サイズの画像であればAnlasを消費せずに生成することができます。
(大きいサイズや複数一括生成、img2img、Variations、Enhance等はAnlasを消費します)
「じゃあ最初から$25のプランに入れば良いじゃん」と思われる方も居るかもしれませんが、
$10から$25に変更する際は差額分の$15だけの追加支払いで済むことに加えて、
更に追加で10000Anlasが貰えます。
なので$25プランに直接入ると10000Anlasしか貰えませんが、
$10から$25に移行すると合計11000Anlas貰うことができるというわけです。
(ぼーる丸も実際にこの手順で進めたので、このような動作をしたのは確認済みです)
ただし、$10から$25に移行する際にどれだけAnlasが余っていても
加算ではなく問答無用で10000Anlasぴったりに補充されるので
必ず$25プランに移行する前に$10プランで貰った1000Anlasは全て使い切りましょう。
(使い切らずに100Anlasくらい余っていたとしても10000Anlasにされてしまうということです)
他にはローカル環境やクラウド環境を作ってNovelAIを動かす方法がありますが、
不正流出したリークデータを使うものなので当ブログでは非推奨とさせていただきます。
(Google検索したらやり方は出てくるとは思いますが、自己責任でお願いします)
とはいえStableDiffusionの派生AI開発陣がNovelAIの技術を取り入れると表明しているので、
そういった他のAIが正式公開されるのを待つのが無難かもしれませんね。

ぼーる丸
$25払っても全然コスパ良いと思えるサービスでした!
NovelAIの呪文のコツ
NovelAIでは英単語をカンマ区切りで書いて狙った画像が出るまで生成するのが一般的です。
そういった単語の羅列をNovelAIを使っている人たちの間では呪文と呼んでいます。
「猫の帽子を被った一人の女の子がサイバーパンク風の街に居る」という絵を生成したい場合、
それらの要素をそれぞれ単語に変換すると「1girl, cat hat, cyberpunk, city」となります。

いやーこれもかっこいい…イラストレーターとしてはこれを見ると胃がキリキリしますね。
この単語も適当ではなくAIにたくさん学習された単語がより強く反映されるらしく、
入力欄に文字を入力すると以下のように多く学習されている順に候補の単語が表示されます。

単語の横に表示されている丸の色が濃いほど深く学習されているようです。
更に単語をより強調したい場合は{}で単語を囲み、
単語の影響を控えめにしたい場合は[]で単語を囲むという方法もあります。

cyberpunkを5重に{}で囲んでみたところ、
サイバーパンク要素がかなり強めに出る結果となりました。
ちなみにあまりに強調しすぎると分裂したり、意味不明な画像になりがちです。
これも詳しい仕様については公式のドキュメントをまずは読むことをおすすめします。
全文英語なので、英語が苦手な方はDeepL翻訳やGoogle翻訳をご利用ください。
Googleで「NovelAI 呪文」等で検索すると呪文がまとめられているサイトが出てくるので、
複雑な呪文の書き方についてはそういったサイトを参考にしましょう。
(転載禁止とされているサイトもあるので当記事には掲載しません)

ぼーる丸
様々な単語を組み合わせることで複雑な構図も作れます!
高品質なAIイラストを出力するためのポイント
とはいえ、無作為に強調したり単語を多くしても
理想のAIイラストを出力するのはなかなか難しかったりします。
というわけでAIイラストを何百枚と作ってきた経験を持つぼーる丸が、
高品質なイラストを出力するためのポイントをシェアさせていただきます。
- 目的と関係の無い単語は含めない
目的と関係の無い単語を入れると、出力結果に悪影響を及ぼす場合があります。 - できるだけ最小限の単語に抑える
入れても出力結果が変わらないような単語は除外しましょう。 - 補強のために類似語をかけ合わせるのもアリ
類似語を並べることにより同じ効果を安定して反映することでもできます。 - 入れた単語は強制的に画面内に映るような構図になる
例えばnavelを入れるとへそが映る構図になりやすいので、上手く活用しましょう。 - Undesired Content(通称UC)で不要な効果を除外する
画面に出したくない効果はUCに単語を入れることで除外することもできます。 - ジャンルによっては絵柄がそのジャンルに引っ張られるので注意
個性的な絵柄の作品が多いジャンルはできる限り含めないようにしましょう。 - 複雑な構図はあまり安定しないためできるだけシンプルな構図に
複雑な構図は描いている人が少ないため学習不足により絵が破綻しやすいです。
AIイラストを作っていて気づいたのは、
目的に近いイラストを作る場合はそれぞれ明確に必要な要素の単語を入れる必要がありますし、
時には引き算も必要で不要な要素はできるだけ最小限に抑えることが大事だと感じました。
結局手描きのイラストを描くときのプロセスと一緒で、
下調べも大事ですしたくさんの知識がある分だけ表現の幅が広がる気がしましたね。
なので常日頃から色んな物を観察して知識を吸収しているような方は、
特にAIイラストクリエイターに向いているのではないでしょうか!

ぼーる丸
イラストレーターのスキルも無駄になりません!
イラストの仕事はAIに奪われるのか?

さて本題です。
「イラストの仕事はAIに奪われるのか?」
この題材を書くためにここまで簡単に解説してきました。

ぼーる丸
みんな不安よな…わかるわかる
これはイラストレーターの間でも賛否両論なのですが…
「一部の仕事は確かに無くなるかもしれないけど、新たなビジネスチャンスもある」
というのがぼーる丸の結論となりました。
不安を煽るために「絵師終わったな~AIに頼んだ方が品質高くて安いし」と言う人も居れば、
安心させるために「絵師には言うほど影響ないし仕事もなくなりません」と言う人も居ます。
とはいえ言ってることはどちらも事実で、両方の側面を孕んでいると私は考えます。
何故ならAIも万能ではなく、以下のようなメリット・デメリットがあるためです。
- 指などの細かな造形の描写が苦手
- 画像生成するのにお金がかかる
- データが少ないジャンルは苦手
- 毎回デザインが変わってしまう
- AIに頼ると自分の画力は上がらない
- psd等でレイヤー分けされていない
- 数秒で高品質な絵が生成できる
- イラストレーターに頼むよりも安価
- 構想のたたき台として優秀
- お蔵入りしたラフもi2iで変換できる
- 苦手な部分をアシストしてもらえる
- 著作権フリーかつ商用利用も可能
※【i2i】img2imgの略。画像を読み込ませて新たな画像を生成する機能。
現状AIは指の描写が苦手だったり、
画像を生成するたびに作風やデザインが変わってしまうという弱点があります。
個人的に思いついたのはそういった弱点を逆手にとって、
AIが生成した不自然な画像を自然に修正するような新たなビジネスもアリかなと感じました。
(写真だって画像編集して見栄え良く補正するようなプロだって存在しますからね)
AIだけでは不自然な部分の修正はなかなか難しいですし、
絵が描けない人にとっては自力でこういった部分の細かい修正をすることは難しいものです。
つまり画像生成AIの分野でもイラストレーターにとっては優位性があるというわけです。
その半面、誰が描いても変わらないような仕事は確実に減っていく気もしています。
(少なくとも私が過去にさせていただいたお仕事の一部はそういうものもありました)
パッと思いついたものでも単発の表紙イラストやCDジャケット、SNSのアイコン等…
連載モノだとAIは毎回画像生成する度にデザインが変わるので対応できないですが、
特に単発で何のコンセプトも無いようなイラストだとAIに取って代わられることでしょう。

ぼーる丸
その人にしか描けない個性的な作風で勝負しよう!
イラストレーターはAIを利用するべきか?

「イラストレーターはAIを利用するべきか?」
についてもイラストレーターの間では意見が割れています。
アナログやベクターイラストをメインに活動されてる方は仕事に使えなかったり、
AIを使っている人のモラルが低いため企業案件で使うのは控えるという考えもあったり…
逆に参考資料として使ったり、キャラクターデザインのたたき台として使うというような
有効活用を考えるイラストレーターさんも多く見かけました。
これについてですがぼーる丸としては割とフラットな目線で、
「使えるなら使えば良いし無理に使わなくても良い」
という考えに至りました。
というのもAIにはメリット・デメリットが両方とも多く存在するので、
使い方によっては毒にも薬にもなるからです。
まずAI画像生成を利用するにはWeb上のサービスやローカルで稼働させる方法がありますが、
どちらにしても画像を生成するのにお金がかかるようになっています。
そしてAIの性質上一発で狙った画像を生成することは難しいため、
ガチャのように何回も生成しなおす必要があり結構な金額や時間がかかったりするわけです。
ってなると一定水準以上の画力がある人は
「これって逆に自分で描いたほうが早いしコスパ良くね?」
と気づくはずです。
そもそもこのような論争は3DCGが普及し始めた頃にも起きていて、
3DCGを取り入れるべきかどうかってなったときに手軽さやコスパとの天秤にかけた結果
結局取り入れる人と取り入れていない人に分かれているのが現状です。
もちろん今後更に進化してより手軽にAIが使える時代もいつか来るとは思いますが、
「現状そんなに焦って導入するほどでもないかな~」という感想を抱きました。
絵が描けないような人には大きな恩恵がありますが、
ある程度の画力があればAIはあっても無くてもあまり変わらないだろうという結論ですね。
今までだって他の人の画像を参考に絵を描くことだってできたのですから。

ぼーる丸
あくまで補助ツールの一種として割り切りましょう!
自作のイラストをAIと疑われないためにするべき対策

AIイラストの登場と共に、イラストレーターが手描きした作品をAIと疑う人が増えてきました。
それもそのはずで、イラストレーターですら見分けるのが困難なレベルまで来ているためです。
そのためイラスト単体では自作と証明するのが難しい状況となってしまいました。
イラストレーターからしたらトレス疑惑に加えて面倒くさいことが増えたなぁと思いますよね。
ということで完璧ではありませんがその解決策として2つの提案があります。
- タイムラプスを記録する
- .psdや.clip等の作業ファイルを残す
現状はこの2つが手軽でマストな方法であり、
よほど悪意のある疑い方の人でなければ納得してくれると思います。
というのもこの2つは捏造することも不可能ではないですがかなりの労力が必要であり、
わざわざこういったものを嘘をついてまで作るくらいなら普通に作った方が楽だからです。
タイムラプスを記録する
タイムラプスとは、イラストソフト上の操作を全て記録し動画化してくれる機能です。
タイムラプスが記録できるソフトの代表としてはCLIP STUDIO PAINTが挙げられます。
タイムラプスの使い方については以下の記事をご覧ください。
AIはノイズから絵を浮かび上がらせるように具現化する方法で画像を作成しているので、
作り方のプロセスが手描きと全然違うため動画を記録することは一つの証明になります。
これを捏造するには相当高度な動画編集スキルが必要となり、
正直AI側が対応しない限りは現状再現することは難しいと言えるでしょう。
.psdや.clip等の作業ファイルを残す
作業ファイルは画像生成AIが作ることができないファイルの一つで、
レイヤー構造を残せるPhotoshopの.psdやCLIP STUDIO PAINTの.clipが有効だと思います。
イラストソフトで絵を描く際に保存するために残すファイルが作業ファイルです。
(一時的に保存しておいて、続きから描くときに開くあのファイルです)
タイムラプスに加えてこういった作業ファイルを残しておけば説得力が増すはずです。
これらを両方用意するのはAI側が対応しない限りかなり難しいものと考えられますね。
ただしレイヤーを途中で統合するような作風だとこの証明方法は難しくなるかもしれません。
その場合はレイヤー構造も見えるように動画でキャプチャーするなどの工夫が必要ですね。
(タイムラプスだとキャンバス上だけの録画になるため、別途キャプチャーソフトが必要です)
AIイラストを使った活動は人に迷惑をかけないように
AIイラストの普及によりpixivを始めとした様々なプラットフォームに影響を与えています。
しかし、AIによる粗製濫造や手描きのイラストレーターに対する嫌がらせ行為により、
AIイラストクリエイターに対して反感を買うようなトラブルが多発しているようです。
こういった行動は誰にとっても気持ちの良いものではないので絶対に控えましょう。
AIを悪用した迷惑行為はAIを使う作家にとっても自らの首を締める行為であり、
未来のAIの発展を阻害するものだと思います。
AIはとても便利なツールなのでこれからの作品制作に良い影響を及ぼしてくれるはずですし、
多くの人に正しい方法で利用されるべきです。
例えば包丁も通常の用途であれば食材を切るのに便利な道具ですが、
危険な考えの人が扱えば他人に刃を向けることだってできてしまうわけです。
物は使いようとはよく言いますが、
こういった新たな技術は使う人のモラルによって印象が決まっていきます。
一部の人の迷惑行為により全体が同じように見られることもよくあることなので、
一人ひとりがモラルを守って平和的にAIを活用していくことを願っています。

ぼーる丸
節度をわきまえた行動を心がけましょう!
おわりに

以上がぼーる丸なりのイラストレーターにとってのAIとの向き合い方になります。
正直どっちつかずな結論となってしまいましたが、
これを極論に持っていくのもどうかと思うので「人によるよね」が一番平和かなと思いました。
ポジティブに考えればイラストの表現やビジネスの幅が広がる気がしますし、
ネガティブに考えればイラストレーターの仕事が奪われるという風にも考えられます。
要はどこにフォーカスを合わせるかってことですね。
ぼーる丸個人の感想としては、
イラストを生成するのが楽しくて一日中イラストガチャしてしまうこともあるくらいでした。
結局のところ楽しんだもん勝ちで、
最悪イラストの仕事がなくなっても他のビジネスに着手するくらいの気持ちで行きましょう。
一番いけないのはAIを恐れるあまりに身動きが取れなくなってしまうことだと思います。
AIの影響で筆を折ってしまった方、休止した方も居るのであまり大きな声では言えませんが…
これからはAIをどう利用していくか、AIにどう立ち向かうかを考えられるメンタルの人が
最終的には生き残っていくんじゃないかなという気がしていますね。

ぼーる丸
現実に向き合いつつも、AIを楽しんでいこう!